ある日、ピカソが女性にスケッチを頼まれたそうです。
彼はその場でさらっと数十秒で描き、こう言った。
「この絵は100万ドルです」
「えっ?たった数十秒で描いたのに?」と驚く女性に、
ピカソは静かにこう返したと言います。
「今は数十秒で描いたかもしれない。
でも、この絵を“描けるようになるまで”に、私は何十年も費やしてきたんです」
この話を聞いたとき、
私はまっさきに“美容の技術”が重なりました。
私たちが日々提供している施術も、
たしかに「数十分」で終わるかもしれない。
けれど、その施術ができるようになるまでに、
何年も何年もかけて、練習を重ね、失敗をし、悩み、努力してきた。
「仕上がりの裏側にある時間」こそが、本当の価値じゃないかと。
でも現実には、
美容業界は価格競争に巻き込まれやすく、
「安くて当たり前」「早くて当たり前」
そんな風潮に、少しずつ削られていく“誇り”を感じることもあります。
先日、石破茂さんが「15年で所得を5割増に」という目標を掲げました。
でも、それ以上に進んでいるのが“物価の上昇”です。
家計に余裕がなくなれば、
まず削られるのは、私たちの仕事領域かもしれません。
食費、光熱費、必需品が高くなれば、
“美容”にかけられるお金は、どこよりも早く「ぜいたく品」扱いされてしまう。
だからこそ、私たちは「価値を伝える」ことをやめてはいけないと思うんです。
ただ“安いから”来るのではなく、
「この人にお願いしたい」「この技術にはお金を払う価値がある」と思ってもらえる存在であること。
それが、これからの美容業が生き残る唯一の道じゃないかと。
ピカソの絵も、美容師の一施術も、
“今”だけを見れば一瞬かもしれない。
でも、それを可能にするまでの努力がある。
だからこそ、安売りじゃなく、価値で選ばれる人になりたい。
そんなことを、あらためて思った日でした。